証拠金取引とレバレッジ

 先物取引では、将来の一定時期での受け渡しの約束ですから、その将来の一定時期までにはタイムラグがあります。従って、将来の一定時期に必ず受け渡しを行わなければならないわけではなく、その約束の期日が来る前に反対の売買契約を結ぶことで、支払う代金と受け取る代金の差額を清算し、取引を終了することができます。これを「差金決済(サキンケッサイ)」といいます。更に、受け渡しは将来の一定時期ですから約束をする時点での商品の総代金(買い方)、もしくは商品の現物(売り方)は必要ありません。つまり、買いからでも売りからでも取引に参加できるのです。

 商品の総代金や商品の現物が必要ない代わりに、取引の担保として「証拠金(ショウコキン)」が必要になります。取引の担保として必要な証拠金は取引金額よりも少ない額で済みます。

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 取引金額と証拠金の金額の関係を示したものが、「レバレッジ倍率」です。レバレッジ倍率は、証拠金から見て何倍の取引が可能であるかを示し「取引金額 ÷ 証拠金」で計算されます。

 先物取引・取引所CFD・店頭CFD・取引所FX・店頭FXは、それぞれ証拠金の計算方法などに違いがあり、証拠金計算方式やレバレッジ倍率の違いを一覧にしたものが下記の表です。

取扱サービス主な銘柄レバレッジ倍率
株価指数先物取引日経225先物・TOPIX先物銘柄毎にリスク量に応じて毎週証拠金が変更されるため一定ではないが、概ね10~30倍超
商品先物取引(OSE)金先物・白金先物
商品先物取引(TOCOM、堂島取引所)ドバイ原油先物・LNG先物・コメ先物
取引所CFD日経225・NYダウ・金・原油
取引所FXドル円・ユーロ円・ユーロドル25倍
店頭CFD金・原油・日経225【商品CFD】25倍・【株価指数CFD】10倍・【バラエティCFD・個別株CFD】5倍
店頭FXドル円・ユーロ円・ユーロドル25倍
暗号資産証拠金取引ビットコイン・イーサリアム2倍

先物取引の証拠金

 国内の先物取引における証拠金は、国際基準となっている「SPAN(スパン)」に準拠しており、国内においては日本証券クリアリング機構(JSCC)が算出を行っています。証拠金は、過去の値動きやオプション取引から計算されるリスク量に基づいて算出されます。算出される1枚あたりの基準となる証拠金は「PSR(プライス・スキャン・レンジ)」といい、原則週の最終営業日に翌週適用分として決定・公表されます。顧客の注文を取り次ぐ各取引業者は、PSR以上の金額を1枚あたりの証拠金として設定します。よって単純な建玉の場合、取引業者が設定する1枚あたりの証拠金がPSRと同じであれば、「PSR×建玉枚数」が必要な証拠金となります。PSRは銘柄毎に異なり限月毎の違いはありませんが、概ね証拠金は取引金額の3%~10%、レバレッジ倍率に置き換えると10倍から30倍超の取引が可能です。なお、商品先物取引においては当限(1番限、最も取引期限までが短い限月)は別途割増証拠金が課される場合があります。

取引所CFD・取引所FXの証拠金

 取引所CFD・取引所FXは「くりっく株365」・「くりっく365」という名称で東京金融取引所により運営されています。

 取引所CFD(くりっく株365)では、東京金融取引所が過去の値動きから算出されるリスク量に基づいて証拠金を算出します。週の第1営業日に翌週適用分の証拠金を「株価指数証拠金基準額」として決定・公表します。顧客の注文を取り次ぐ各取引業者は株価指数証拠金基準額以上の証拠金を1枚あたりの証拠金として設定します。

 取引所FX(くりっく365)では、くりっく株365と同様に東京金融取引所が、週の第1営業日に翌週適用分の証拠金を「為替証拠金基準額」として決定・公表します。ただし、FXにおいては個人顧客の取引におけるレバレッジ倍率の上限は25倍に規制されており、証拠金決定時における取引金額の25分の1(取引金額の4%)が自動的に証拠金となります(決定根拠となる取引金額や適用時までのタイムラグがあるため実際には25倍を超える場合がある)。

店頭CFD・店頭FXの証拠金

 店頭CFD・店頭FXは各取引業者が独自に運営するサービスで各取引業者によって取引可能な銘柄に違いがありますが、取引可能な銘柄の種類によってレバレッジ倍率の規制が掛けられています。証拠金は、取引金額に一定の割合を掛けた値が自動的に必要な証拠金となる計算方式が採られます。

 店頭FXでは、前述の取引所FXと同様に取引金額の4%以上の証拠金(レバレッジ倍率は最大25倍)での取引が可能となります。

 店頭CFDでは、「商品CFD」・「株価指数CFD」・「バラエティCFD」・「個別株CFD」で異なり、金・原油などの商品を対象としたCFD「商品CFD」では取引金額の5%以上の証拠金(レバレッジ倍率は最大20倍)、日経225・NYダウなどの株価指数を対象としたCFD「株価指数CFD」では取引金額の10%以上の証拠金(同10倍)、ボラティリティ指数やETFなどを対象としたCFD「バラエティCFD」や個別企業の株式を対象としたCFD「個別株CFD」では取引金額の20%以上の証拠金(同5倍)での取引が可能です。

暗号資産証拠金取引の証拠金

 暗号資産証拠金取引は、暗号資産を取引対象とした証拠金取引です(暗号資産を担保とする取引ではありません)。暗号資産CFDや暗号資産FXなどとも呼ばれますが、CFDやFXという名称からもわかるように、証拠金の計算には取引金額に一定の割合を掛けた値が自動的に必要な証拠金となる計算方式が採られています。暗号資産証拠金取引では、取引金額の50%以上の証拠金(レバレッジ倍率は最大2倍)での取引が可能です。